「出会い」
資料館と文化博物館には、武器や農耕具、祭器に神器、服、装飾品、民家の中... 本の挿絵や写真でしか見れなかったものが一杯でした。 みんぱく(大阪の万博公園内にある民族博物館)にもアイヌ関連の展示はありますが、 こんなにいろいろ無かったと思います。 カムイユカラも初めて聞いた...意味が分かればいいんですけれども(泣)。 大阪でアイヌ語教室希望。 展示の中には、古い物もあれば、最近になって作られた物もあります。 ふと足を止めたガラスケースの中に、鞘の木彫りが美しいメノコマキリ(女性用の刀) を発見。 新しいものらしく、横に製作者の名前と写真がありました。 と、その名前に思い当たる所があり、入り口で貰った木彫教室のパンフレットに目を 走らせます。 そこに掲載された民芸品店のひとつが、製作者さんの苗字と同じ。 あと、民宿の本棚から借りて読んだ本の中に、二風谷在住の人々の話を集めたものが あったんですが、そこに載ってた木彫職人さんとも名前が同じような...。 この刀を彫った人は、近くに住んでいるのかも知れない。 探してみようと思いました。 そう言えばあのメノコマキリ、写真撮らなかったなあ...綺麗な鱗模様とか目に残 ってるのに。 資料館で普通のマキリ(小刀)を撮ったのがあるので、参考までに。 形としてはこんなの。バスが出るまで、あと1時間くらい。 お土産を探しがてら歩き始めます。
「職人さんたち」
博物館を出て、近くの民芸品店を覗いてみます。 「何処から来なさったね」 おばあさんが縫い物の手を止めて聞いてきます。 飲み物やアイスクリームも売っていたので、冷たいトマトジュースを貰って休憩。 ふと、おばあさんの手元を見れば、綺麗なアイヌの文様の型紙が、ハンカチくらいの 大きさの布に仮止めしてあります。 お店に並ぶ巾着やマタンプシ(髪をまとめる為の鉢巻のようなもの)などの布製品には、 みんな綺麗なアイヌ模様の刺繍が施してあります。 おばあさんの手作りだそうです。 いいなあ...凄い。 私、恐ろしく不器用な人間ですから(汗)、もう単純に尊敬。 思わず買ってしまいました。 しかも値段、ちょっとオマケしてくれたんです。感謝。 探索中の木彫店の事を訊ねてみると、場所を教えてくれました。 早速向かいます。 途中、また別の民芸品店。 こちらは、おじさんがやっており、木彫の品が手作りだそうです。 こうやって、作った人が目の前に居るって感動するなあ...。 綺麗な文様を施したトキパスイ(よく分からないけどお祈りに使う大切な品みたい)か ら、耳掻きの先につけられた小さなフクロウまで、作品はいろいろ。 資料館で撮ったものですが、これがトキパスイ。 それぞれ、いろんな模様が彫ってあるんですよ。![]()
アイヌ模様には魔除けの意味があるのだそうです。 服の袖口や合わせの部分にある刺繍も、悪いものが入り込まないようにって事らしい ですし。 一通り見て回って、首飾りと携帯ストラップをお土産にしました。 実は装身具が凄い苦手なんですけれども、この首飾りはよく身に付けてます。 魔除けになってくれているのかな。 ...そんな事をしていると、だんだん時間が無くなります(汗)。 また来たらいいよ、二風谷に来た人は、また来たくなるみたいだから、と。 次に長い休みを取るのは、また仕事辞めた時かなあと思うんですが、きっとまた来れ るよと微笑んで頂きました...あははは(汗)。
「メノコマキリ」
教えて頂いた民芸店に辿り着いた頃には、バス発車まで15分くらい。 どうしよう本気で時間ないぞ(汗)。 しかもココ、お店と言うより仕事場です。 そしてまさに仕事中です。 声掛けたら邪魔になりそうだなあ...。 でもせっかく来たんだし、次はいつ来れるか分からないし、行ってみます。 博物館で刀を見て、ここで作ってるんじゃないかと思って来た事を伝えると、中を見 せてくれました。 あったメノコマキリ!! 普通のマキリや、タシロ(鉈のような大きな刃物)もあります。 木の盆や受け皿に綺麗な模様を彫ったものもあります。 パターンの型紙が置いてあり、そのデザインも全部作るんだそうです。 ガラス棚には、完成品のメノコマキリが3つ。 作業台にも作成中の刃が刺さってます。 こうやって手作りしてるんですね...飾ってある刀の模様は全部違って、それぞれ 本当に細かくて綺麗です。 紐の先には鹿の角がついてます。これで腰にぶら下げるんですね。 #ここでも写真撮るどころじゃなかったなあ...。 「手に取っていいですよ」 「いいんですか?(どきどき)」 「展示品じゃないんだから」 緊張して手に取り、抜いてみようとしたら、これがなかなか抜けない。 「すぐ抜けないように作ってあるから」 鞘に親指を当て、ぐっと力を入れてみる。 抜けました。 ちゃんと刀として使えるものだそうです。 どういう用途で使われてきたものなのか訊ねてみると、女性が身に付けて、ちょっと した物を切るとか、料理とか、いろいろ使ったとか。 その隣にはマキリの完成品。 男性用で、狩りなどにも使うものだそうです。 「メノコマキリよりも一回り大きいんですね」 「熊の心臓に届く長さが必要だから」 うわあああ(汗)。 マキリとタシロを両の腰に結わえて見せてくれました。 このまま狩りに出てしまいそうだ、この方...。 メノコマキリを一振り、是非買って帰りたかったんですけど、生憎持ち合わせがなく、 ついでに銀行も時間もありません(泣)。 そうしたら、通販もやっていると名刺をくれました。 薄い木の板に印刷された、木彫職人さんらしい名刺でした。 後ろ髪を引かれる思いでバス停に走り、私は二風谷を後にしました。 ありがとう職人の皆様方。 本当に、もう一度訪れたい場所です。