カムイコタンを求めて


「カムイコタンはドコ?」

私が旭川市内の宿泊先に到着したのは、7月24日、午後4時くらいだったと記憶し
ています。

部屋に荷物を置いて、早速出発。
まずフロントで訊ねます。

「カムイコタンには、どうやって行ったらいいんですか?」

...実は、知らずに来ました(死)。

いや一応、旭川からバスで行けるらしい事は調べたんですが。
実際どこらへんに在るのか、ガイドブックに全然載ってないんですよ。
ただ、旭川近辺に神居何丁目とか一杯あるから、まあ、この辺なんじゃないかなと思
っていました。
もしかしたら歩いて行ける範囲かも?と...。

「これから神居古潭ですか?」

ホテルの人が難しい顔をして時刻表を取り出したので、何となくヤな予感。
どうも私が思う程には近くない上に、バスの本数も少ないらしいのです。
また、「確かに景勝地ですけどね...」との話しぶりから、あまりメジャーな観光
地でもない事が窺えます。

とりあえず、バスターミナルから芦別行きに乗れば行けるけど、次のバスは5時くら
いで、それから到着まで30分くらい掛かるし、観光して帰る頃にはバスが無いんじ
ゃないか?と。
大体、もうすぐ夕方だし雨だし、景色を楽しんだり散策するには向きませんよ、と。

でも俺は行きたい(死)。

フロントでお礼を言って、教えて貰ったバスターミナルへ。
芦別行き以外にも神居古潭に停まるバスがあるかも知れないと言われたので、今度は
ターミナルの案内嬢に聞いてみます。

「次に神居古潭へ行くバスはどれですか?」
「モセウシ行きです」

もせうし??

何度聞き返しても、頭の中で漢字変換不能。
時刻表で確認すると『妹背牛』。
分かるかーい(笑)。

時間は、教えて貰った芦別行きよりも30分ほど早い。
ばっちりです。
待ち時間に傘も買って準備OK。雨なんかに負けません。

この時、ターミナルでは片道分の切符だけ買ったのですが。
後で思えば、素直に往復分買っていれば平穏無事だったんですよねえ...(遠い目)。

とにかく無事バスに乗り、神居古潭へと向かいます。

「神の里」

車中、旭川市街の地図を見ながら、バスのルートをチェックしていきます。
それはまもなく、市街図から抜け出してしまいました。
まだまだ先らしいです。

民家が消えてゆきます。
車窓は一面の緑。

新潟で言えば、津川をドライブしているような感じでしょうか(笑)。

長いトンネルを抜け、こんな緑の真ん中で降りてどうするんだ?というような所で、
次は神居古潭の掲示。
降りたのは私一人でした。

遠ざかるバスの車影を見送った後、改めて四方を見渡します。
一本道と、その両脇を埋める緑。
その他の何もありません。



これでは右へ行くのか左へ行くのか...。
誰かに聞こうにも、人の気配がまるで感じられません。
通るのは車ばかりです。

しばらくウロウロして、バスが来た方角に戻ってゆくと、神居古潭大橋。
橋の向こうを何気なく眺め下ろした時...。

おお!!!



斬紅郎ナコルルステージ!!(笑)

雨に霞む緑の渓谷は、とても神秘的で美しいものでした。
水と緑の匂いが心地良い。
秋の紅葉とか綺麗だろうなあ...。

ああ、カムイコタンに立っているんだな、と。

橋を越えた所に「←神居古潭」の看板を発見。
指示通り左に曲がって川沿いに、みやげ物屋さんが何軒かありますが、平日だからか
全部閉まってました。

一応、観光地らしい案内板など発見。

 

橋を渡り、旧駅舎やSLなどを見て、このまま神居岩まで歩いてみようかな、と思っ
たんですが、ここは道か?と思うような草の生い茂る山道のうえ、マムシ注意、落石
注意の看板が並び...一人だし、行方不明になっても誰も見つけてくれないなあと
断念。
あと地元では、急流に沈んだ人の霊が出るとか言われてる話を聞いていたので...
暗いし雨だし恐かったんですよう(泣)。
人間いないし。

駅舎で雨宿り中の2組のカップルを見たのが、この日、帰りのバスに乗り込むまでに
見た最後の人間でした。

「目指せ旭川」

川沿いの道は、どうやら旭川まで続いているようです。
しばらく風景を楽しみながら、歩ける所までのんびり歩いて帰ろうと決めました。
時間はまだ5時台。
最終のバスが7時半くらいである事は確認済みです。
疲れたら、最寄りのバス停から帰れば良いのです。

夢殿観音、古潭公園...てくてく歩きながら、その間、誰にも会わない事が少し気
になります。
途中、ぱらぱら見えていた民家も、ついに見えなくなりました。
左手には石狩川と濃い緑、右手には車道。
雨は止んだり、また降り出したり...。

寂しくて、歌いながら歩き続けます。
誰か来たら恥ずかしいなと思いつつも、前後遥か視界の限り、人影ひとつ見えません。
歌えど歩けど、通るのは車ばかりで、旭川はまだまだ遠い。
不安になります。
うちの地元は蒲原平野で、田舎度合いなら負けないんですけれども(笑)、何ていうか、
地元であれば360度パノラマ田んぼである所が、ここでは森です。
田んぼならまだ人の手が入ってるって感じがするんですが、森だと本気で人間現れな
そうです(汗)。

いいかげんバス停を探そうと思い始めます。
が、見つからない。
のみならず、歩く道が車道と離れていくんですけど!!
看板発見。
この先、車道は春志内トンネルに入る模様。
で、私が歩いてるサイクリングロードはトンネル外のまま続きます。
トンネルの全長、約2km。
そこをやや大回りに迂回するサイクリングロードは、もうちょっとあるか?

次のバス停は、更に2〜3km先と予測(死)。

しかし戻るのも悔しくて前進。
車の音が遠ざかると、もう耳に届くのは川のせせらぎだけ。
日が落ちてゆく...。
それで初めて、街灯が立ってない事に気付きました。
今まで明るかったのは、車道の明かりだったんですね。
やばい、雨曇りで月明かりも望めないし、このまま日が暮れると死ねる(汗)。

周辺既にこんな感じ。



こええ...。
早足になり、やがて走り出します。
旭川まで10kmの看板。
裏には神居古潭まで6kmとあるから、私、6km歩いてきた訳です。
次のバス停はドコ?
てか、最終バスまでに辿り着けるのか?!
辿り着けなかったら、旭川まで全16kmをワンダリングですかーーー!!(泣)

時計は7時を回る...。

ふと、耳に届く車の音。



あったーーーー!!!

柵を乗り越え、車道脇のバス停に立って、ほっと一息。
座り込みたい程の疲れも忘れて、まもなく来る筈のバスを待ちます。
ヘッドライトがいくつも通り過ぎてゆく中、ようやく目的のバス発見!
良かった...と思ったら、目の前を通り過ぎようとして、3mも向こうで停車。

「珍しい所に居なさったねえ」

今、うっかり通り過ぎようとしなさったねえ、運転手サマ...(微笑)。

乗客2名(俺含む)を乗せて一路旭川。
終わり良ければ全て良し。
いつか晴れの日に自転車を借りてリトライしようと思う私でした。


ありがとうカムイコタン。